
アメリカで働いていると、同僚とビジネススキルの話をする機会が非常に多いです。
「スキルこそが身を助ける」というイメージがあるようで、同僚との会話でもしょっちゅう話題に上るんです。
で、ビジネスであれ、政治であれ、スポーツであれ、常に必要とされる能力の1つがリーダーシップです。
アメリカの会社では、リーダーシップが本当に重要視されていて、
マネージャーでない1スタッフであっても、「リーダーシップを取って業務をこなせ」と必ず言われます。
求められるリーダー像ってどんなんかな〜とか考えてみてもなかなか答えは出ない。
それに、リーダーシップに関する本って、アメリカでも日本でもむちゃくちゃいっぱいあるにはあるんですが、
ぼーっと読んでいても頭に入ってこないですよね?笑
ということで、リーダーとはどうあるべきかを面白く考えることはできないか、試してみました。
私の大好きなプロレスを思い浮かべてみると、おぼろげながら今の時代のリーダー像が見えてきたのでご紹介します。
この記事の目次
プロレス界におけるリーダーの象徴=チャンピオンベルト
プロレス団体って世の中に無数にあるのですが、どの団体に所属していようが、
プロレスラーが目指すのは「チャンピオンベルト」です。
プロレス団体のストーリーは、常にこのチャンピオンベルトを中心に展開されます。
ベルトを持つものが、会場で一番人気になりますし、
ベルトを持つものが、各大会の締めのマイクパフォーマンスをします。
ベルトを持つものが、グッズを一番売上ます。
チャンピオンが、その団体のストーリー展開を決めるといっても過言ではありません。
そして、下手くそなストーリー展開が進んでいけば、次第に観客が減っていき、その団体は倒産の危機に陥ります。
プロレス団体の経営者としては、「誰がチャンピオンに相応しいのか?」を常に考える必要があります。
AKB48のセンターを決めるようなものでしょうか?(笑)
(画像:http://prowrestling.wikia.com/wiki/File:WWE_Championship.png)
世界最大、アメリカ最大のプロレス団体WWEのチャンピオンの変遷
アメリカで一番大きなプロレス団体といえば、WWE (World Wrestling Entertainment ) です。
設立は1952年、直近の売上高は5億ドル以上の巨大企業です。
日本で一番大きなプロレス団体である「新日本プロレス」の売上が22億円ほどなので、その20倍以上の規模です。
大きな大会だと10万人規模でお客さんが入ります。当然世界最大のプロレス団体です。
このWWEのスター選手となると、給料もとんでもない額です。
さすがにメジャーリーガー並みとまではいきませんが、年収が1億を越えるレスラーが何人もいます。
そんなWWEのチャンピオンは、本当に責任重大です。プロレスは生き物なので、チャンピオンの試合内容や試合前後のドラマ部分の演技、最後のマイクパフォーマンスに説得力がなければ、観客が一気に冷めてしまい大ブーイングになります。
WWEとしても、「今誰が人気なのか?誰が人を集められるのか?」を常にウォッチしているわけです。
・・と、前置きが長くなりましたが、このWWEのヘビー級チャンピオンの歴史を振り返りましょう。
全てを網羅できませんが、時代毎の有名チャンピオンとその特徴を合わせてご紹介します。
ハルクホーガン
画像:http://cdn.unilad.co.uk/wp-content/uploads/2015/08/UNILAD-hh15.jpg
言わずと知れた昭和の名物レスラー:ハルクホーガン。1990年に初めてWWEチャンピオンになりました。
日本にも何回も来日しており、アントニオ猪木とも死闘を演じています。
得意技のラリアット(アックスボンバーで)猪木が失神して舌を出した試合もありましたね。
黄色のTシャツがトレードマークで、怒るとひきちぎります(笑)
一時期悪者キャラ(ヒール)を演じた時期もありますが、プロレスを世の中に広めた大スターです。
ホーガンには、「ハルク・アップ状態」と呼ばれる無敵状態があり、ファン(ハルカマニア)達の声援によって体を奮い立たせ、相手を威嚇します。この状態になると、相手の攻撃は一切聞かなくなるというまるでアニメのような設定(笑)
ハルク・ホーガンは、誰からも嫌われない、みんなのチャンピオンでした。
「プロレスラー=超人。誰も文句は言えない」というイメージを植え付けた人です。
ブレット・ハート
(画像:http://wwe.sportsnet.ca/wwe/sharpshootin-bret-hart-part-ii/)
ピンクと黒がトレードマークだったレスラー。
WWEという米国の団体でありながら、カナダ人として初めてのチャンピオンになりました。
そこまでマイクパフォーマンスは多くなく、技のうまさとかっこよさでファンに認められた選手。
写真のシャープシューター(サソリ固め)が一番の得意技でした。
ブレットハートを知る上で最も重要なのがモントリオール事件。
試合結果にインチキをされて、無理矢理WWEでの地位を下げられてしまった悲しいストーリーの持ち主です。
ショーンマイケルズ
(画像:http://static.sportskeeda.com/wp-content/uploads/2015/02/shawn-1423120934.jpg)
ブレットハートがWWEを追放されるきっかけとなったモントリオール事件での対戦相手がこのショーンマイケルズです。
1996年に初めてチャンピオンになりました。
WWEの歴史において、何度となくチャンピオン戦線に絡むスーパースターですが、基本的には悪者です(笑)
Heart Break Kid、通称HBKと呼ばれています。nWOやDXといったヒールユニットでの活躍がメインでした。
基本的な戦い方は、卑怯・下劣と呼ばれるものでしたが、レスリングテクニックはものすごかったです。
ブレットハートのようないわゆるヒーローの後で、ヒールレスラーが求められていた時代だったのかもしれません。
「やり方は何でも良いから、試合に勝ったやつが強い」という傾向が強かったです。
Suck it (クソ野郎!)がコールでしたから(笑)
ショーンマイケルズの得意技は、スイートチンミュージックという相手の顎を狙うトラースキック。これがめっちゃかっこいいんです。。
画像:https://bigbluetheory.files.wordpress.com/2015/03/448f6fdb13040703a24c1c392c21e09e.jpg
スティーブオースチン
1990年代後半に突如現れて一気にカリスマになったのがストーンコールド・スティーブオースチン。
とにかく破天荒な人で、誰彼構わずぶっとばしちゃうんです(笑)Toughest Son Of a Bitchなんて呼び方もありました。
破天荒といっても、決して悪者側ではありません。むしろ、ショーンマイケルズのようなヒールレスラーと対立する側です。
必殺技のスタナーの決めるシーンは、見ていて本当に爽快でした。
リング上で缶ビールをかっくらうシーンもむちゃくちゃ絵になるんです。WWEに”Hell Yeah!”のコールを根付かせた人です。
この時代は、ジメジメした嫌な敵を一掃するようなスカッとしたヒーローが求められていました。
画像:http://cdn2-www.wrestlezone.com/assets/uploads/2013/12/stone-coldwall.jpg
画像:http://sportsmockery.com/wp-content/uploads/2014/08/stunner.jpg
HHH (トリプルH)
稀代の悪役レスラーですね(笑)
ニックネームは、The Game .ゲームの支配者、みたいな感じです。
トリプルHは、どんな手段を使ってでも相手を倒す、卑怯な手段も厭わないというキャラ設定です。
もちろんプロレスのテクニックも超一流ですし、入場シーンは圧巻です。
ストーンコールドやこの後出てくるロックと何度も抗争を繰り広げていました。
レスラーとしてはほぼ引退しましたが、今もオーソリティーズ(権威)という設定でWWEのストーリーにずっと出演しています。
こういう悪役レスラーって一定の人気で終わることが多いのですが、HHHの人気は群を抜いています。
画像:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Triple_H_WWE_Champion_2008.jpg
画像:http://cleatgeeks.com/wp-content/uploads/2015/03/image48.jpg
ザ・ロック
画像http://www.wwe.com/f/wysiwyg/image/2014/09/therock.jpg
近代WWE史上最高のレスラー、それがザ・ロックです。
People’s Championと呼ばれ、ロックが嫌いな人はいないんじゃないかという人気っぷり。
彼が出てきた瞬間、会場全体が爆発するような歓声に包まれます。
マイクパフォーマンスのうまさも他を寄せ付けません。まさしくカリスマのしゃべりっぷり。
If you smell, what The Rock is cooking! (ロック様の妙技を味わえ!)
Know your role, and Shut your Mouth! (お前の意義を知れ、その口を閉じろ!)
などなど、決め台詞がたくさんあって、みんなで叫ぶんです。
現在は、ドゥウェイン・ジョンソンとしてハリウッド映画でも活躍に大分シフトしています。
スコーピオンキングの人ですよー。
ザ・ロックは絶対的なベビーフェイスですが、決して客に媚びることはなく、常にかっこいいダテ男を目指しています。
まゆをクイっと上げる表情が大人気なんです。
画像:bleacherreport.com
ああ、何が言いたいかというと、ロックはPeople’s Championと言われながらも、唯我独尊のチャンピオン像を作りあげた人です。
ジョン・シナ
ジョン・シナはロックの次のスーパースターとして、WWEから大プッシュされた選手ですが、
残念ながら観客からの信頼を得られませんでした。いまいちパッとしなかったチャンピオンでした。
ダニエル・ブライアン
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2012年から14年にかけて絶大な人気を集めたのがダニエル・ブライアンです。
彼のすごいところは、「決して強くないチャンピオン像」を作り上げた所にあります。
これまでのWWEチャンピオンとは大分異なり、ダニエルブライアンはよくやられるんです(笑)
強いチャンピオンではなく、弱いチャンピオン。
やられてもやられても立ち上がるブライアンに観客が感情移入していき、試合中・試合終了後に必ず起きる“YES”チャントはものすごい鳥肌ものです。
両手を上げてYES!YES!と叫ぶだけのパフォーマンスなのですが、いつからかこれが彼のトレードマークになりました。
どんなに強い相手と戦っても、観客はダニエルブライアンをヒーローとして認め、YESチャントで応援するんです。
その様子は圧巻で、ザ・ロックの後のスターを務めるのに一番相応しいレスラーだと思います。
WWEが求めるリーダー像 -変わる点と変わらない点
さあ、ここまでざっとWWEのチャンピオンを振り返って来ました。私のざっくり解説ではわかりづらい部分もあったと思うので、WWEが求めるリーダー像の変遷をまとめます。
まず、ホーガンから始まる90年代のチャンピオンから変わっていない点は、人を惹き付ける能力ことです。
これは、人に好かれるということとは異なります。
だって、ホーガンのようにみんなに好かれる人ばっかりがチャンピオンに選ばれたわけではありません。
ショーンマイケルズなんて、大嫌いなファンもいたと思いますが、どうしても彼の試合は見てしまう。
だからこそ、WWEも彼を何回もチャンピオンにしました。ロックにしても、ダニエルブライアンにしてもここは一緒ですね。
一方で、今と昔のリーダー(チャンピオン)で違うところはどこか。それは周りの人との距離感だと思うんです。
昔のリーダーは、「道を示す」ことが求められていました。
トリプルHのように悪の限りを尽くす道でもいいですし、ザ・ロックのように「かっこいい俺についてこい」でも良かったんです。レスラー=普通の人間じゃないという意識を観客に持たせて、非現実を魅せていました。
ところが、ダニエルブライアンが人気になってきた頃から、少し求められるリーダー像が変わってきているように思います。
ブライアンは、元々WWEとしてもプッシュするレスラーではありませんでした。ところが彼の愛らしさや、弱さに観客が魅力を感じるようになり、大会のメインイベンターになっていったのです。
YES!!チャントを叫ぶファン達も、彼に道を示すことを求めていません。ファンと一緒に育っていく彼を観るのが嬉しいという感覚なんです。なんというか、チャンピオンが非常に観客に近づいてきた感じです。
自分の信じる道をひたすら突き進むリーダーではなく、まだまだ道は見えていないけど、手探りで周りと協力しながら物事を進めていく協調型の人がリーダーになれる時代が来たのかなと思っています。
リーダーシップって本当に難しいですが、アメリカの優良企業WWEからも学ぶ点は多いなと感じた次第です。